天も地も現世ながら春がすみ

 線香のかおり漂う彼岸入り

 二度寝してまだ降りやまぬ春の雨

 春陰やどこぞの寺で鐘が鳴る

 よみがえる木々もろもろに春の雨

 散歩路に子らの声充つあたたかし

 遠山の淡き重なり凍て返る

 遠富士が茜に染まり凍て返る

 大勢のひとに紛れて梅の宴

 憂いをば抱くこころに落ち椿

 草萌えて噴水玉のはじけおり

 春風やつくしほとけのざ足許に

 春霞へいま融けかかる遠き富士

 田おこしの土の匂いやつくしんぼ

 春眠や昨夜のままのマグカップ

 雨あとの水溜まりにある春の空

 春雨やちいさき川の薄濁り

 やわらかに水辺を染める薄紅?

 春めいて冷珈舌に心地よく

 春がすみ軒でほろろと鳩が鳴く

 終日ののんべんだらりん春朧

 山吹の小径をひとり彷徨えり

 たんぽぽやぶつかりあいて子らがゆく